2019年1月31日木曜日

フェノメナ<台風>

例えば風強き日 
即ち台風で 
屋根が飛ぶ事がたまに在りし 
まるでかすがいなきかの如く 
飛ぶ 
しかし其の確率は多摩川の氾濫する其れの如し 
たまたまに 
風が左から強き折切妻に風当たりしは 
右下がりの勾配の屋根に 
揚力働きし 
風速強まれば屋根が飛ぶなり 

たまには

フェノメナ<走る騒音>

踏切で 
警報鳴り出す時 
車は電車の通過待ち 
その時電車の走行音うるさし 
東西に伸びし線路の脇 
上り電車の走行音 
踏切にやって来る時 
キー上がり 
遠ざかりし時 
キー下がり




フェノメナ<照りつける太陽>

ある時友人3人と大島へ行った 
夜を船で過ごし明け方着いた 
そして当時出来立ての 
遊歩道を歩く 
夏盛の太陽が照りつける 
そこで目を引いたの物が 
ミミズの死骸の山であった 
遊歩道には草地との段差があり 
ミミズは遊歩道に落ちたら 
草地に這い上がる事ができなかった 
ミミズは日干しであった 

ミミズは2次元の世界を生きていたのであった

フェノメナ<自動巻ゼンマイ時計>

かつて 
世界の時計は 
みな狂っていた 
そう考えた瞬間 
電波時計が出現した 
その時世界の時計は 
皆合った 
何年かして地震がおきた 
その際に電波時計が 
通用しなかった 
それで自動巻ぜんまい時計をかった



フェノメナ<砂金>

かつて小川には 
金が出た 
さらさら流れる 
小川に出るのは 
砂金であった 
比重の最大なる物をこすには 
小川の底の砂地を水でこせば良かった 
水で砂を流してしまえば 
砂金がざるの底に残る 
お金には成らない子供の遊びというわけだ 

せせらぎ無き時代欲しく成る小川のせせらぎ

フェノメナ<今昔>

昔昔我が家の畑の脇に 
森があった 
こんもりとして遠くからも目立った 
其の中には 
日中でもヒンヤリとし 
苔むしたような空間に 
水車小屋があった 
ところが今はマンションが立ち 

森が消えた

フェノメナ<完熟トマト>

晩夏には 
収穫を終えたトマトの木が 
横になる 
其の頂部に一個のトマトが 
なっている 
完熟トマト 
水浴おえた子供たちが畑で遊ぶ 
其の一個のトマトの甘みが 
終生忘れられない 
味と成る 
そしてトマトの木は 

一つの素描画となっていた

フェノメナ

曇天の空から落ちる水滴 
雲一つ無いかの様 
影も無き人が傘をさす 
梅雨だから 
色こい影を持つ人も傘をさす 
夏だから

朝日

一方で御来光有りとすれば 
一方で家々の谷間に射す光有り 
散歩がてら 
谷間の光で暖まる 
新鮮な外気に浸され 
体が洗われる 
ぬくぬくとしたダウンコートがそれを助ける 
先だっての件 キンモクセイの香りがしたのに  
今は真冬の感 
そうだろう 

部屋に戻り 
暖房をきかす 

最近買ったばかりの椅子が迎えてくれた

冬に期待するもの

凍てつく冬の空気は 
遠くに見える山のエッジを 
鋭くし 
列車での旅にて 
外を見やれば 
行き先を 
阻むが如く 
立ちはだかる山 
呼吸程よく楽になりて 
山に向かって列車は走り 
目的地は山の懐か 
山の懐には 
炭火在りし 
囲炉裏在りて 
暖をとる配剤なり 
炭火の赤い輝きが 
赤々と具合良し 
山々の色炭火の色 
鮮烈な配置 
コントラスト強く 
鮮やかに 




宴の後


夢中になること 
それは毎日が宴だ 
桜咲きそして散り 
その間変わりなき時間が過ぎ 
今年は今年の風が吹くか 

その時ふと思う 
今年のパースペクティブ 
既に3ヶ月過ぎ 
やっと今年に慣れたか 
ふと先行きの消点は人生の終着駅か 


たまには道中羽目を外し 
宴も良いだろう 
そして今夏盛り 
蝉のはかなさ 
つくずく思う 


冬枯れの欅



          冬枯れの欅

        枯れ葉落ち
        蚕食されたような木々の梢
        冬枯れの欅
        2泊3日で帰った実家で
        空を見上げる

        枝枝にムクドリがたまに止まり
        私は実家に泊まるという訳だ
        昔はこの季節地面は霜柱で固まり
        足音はザクザクと響く

        そして
        松の内は少し御目出度かった
        正月も二日を廻り
        私は自分の部屋に帰る
        帰路の車の中ではベートーベンが鳴った